【給与のデジタル払い】2023年4月解禁!メリット・デメリットを解説

これまで給与は、現金で手渡される、もしくは銀行口座へ振り込まれていました。

これらに加えて2023年4月1日以降、従業員側の同意がある場合などに限り、企業側はデジタルマネーでの給与支払いが可能になります。

近年、普及が拡大するキャッシュレス決済ですが、世界的に見ると日本はまだまだキャッシュレス後進国です。デジタル給与が始まり、さらに急加速することが期待されています。

給与デジタル払いの解禁は、従業員や担当者にどのような影響を与え、またどのように備える必要があるのでしょうか。

今回は、給与デジタル払いのメリット・デメリットをはじめ、気をつけたいポイントなどを解説します。

給与のデジタル払いとは

給与のデジタル払いとは、電子マネーやスマートフォンの決済アプリを利用し、資金移動業者(たとえばPayPayや楽天ペイ、d払いなどのサービス)のアカウントに給与を振り込む仕組みです。

なぜデジタル給与が解禁されるのか

日本でも急速に普及しているキャッシュレス決済ですが、先述のとおり、世界的に見るとまだまだキャッシュレス後進国。

韓国では9割以上、中国やイギリスでも7割以上の決済がキャッシュレス化しているといわれているのに対し、日本のキャッシュレス決済比率は2021年現在32.5%。世界的なキャッシュレスの波に乗り遅れないためにも、政府主導でキャッシュレス化を進めているわけです。

給与の受取手段を増やせば、外国人労働者はより日本で働きやすくなるでしょう。人材不足の今、外国人の人材受け入れを増やしたい狙いもあります。

またインバウンド消費の増大や金融サービスの拡大なども期待できるでしょう。

給与デジタル払いのメリット

給与のデジタル払いを導入することで、どのようなメリットやデメリットがあるかが、気になるところ。

まずはメリットを見てみましょう。主なメリットは次のとおり。

  • 振込手数料の削減
  • 銀行口座がない従業員にも給与がデジタル払いで支給可能
  • 従業員への福利厚生の一環になる

企業側の大きなメリットとして、振込手数料の削減が挙げられます。

給与を銀行口座に振り込む際、従業員の人数分、振込手数料を負担しなければなりません。一方、資金移動業者への送金にかかる手数料は安いため、負担が軽減。給与デジタル払いの導入により、振込手数料を大きく削減することが可能です。

また銀行口座を持っていない従業員、たとえば外国人労働者などに対しても、現金以外の方法で給与の支払いができるように。

さらに決済アプリや電子マネーは利用するとポイント還元を受けられるので、従業員は給与デジタル払いによってポイントを得られることが見込まれ、企業側はそれを福利厚生の一環とすることができます。

給与デジタル払いのデメリット

続いて気になるデメリットです。導入の際は正しく理解しておきましょう。主なデメリットは次のとおり。

  • システムの導入・運用コストや担当者の負担が増える
  • 賃金払いとデジタル払いの二重運用が発生する
  • 資金移動業者の口座入金額の上限は100万円

デジタル給与に対応するために、従業員側の電子マネーについての情報を取得したり、決済アプリ側のシステムと連携したり、企業側はさまざまな準備が必要です。

新たな給与支払いシステムの構築コスト、運用コストなどもかかります。また従業員の情報取得の手間がかかるだけでなく、取得した情報を安全に管理しなければなりません。個人情報の漏洩が起こらないよう厳重な取り扱いが求められます。

これまでの運用がそのまま残った上に、追加のシステム構築や運用が必要となるので、担当者の負担は増えるでしょう。

ただし、一度運用が確立すればそこまで大きな手間はかからないとも思われます。

また給与デジタル払いを導入しても、「全額をデジタル払いに移行してほしい」という従業員はそれほど多くはないでしょう。希望しない従業員に対しては、これまでどおり銀行口座への振込や現金支給で給与支払いを行う必要があります。

つまり一二重運用が発生し、その分事務負担が増えることに。これも企業側の大きなデメリットです。

資金移動業者の口座は預貯金口座ではないため、入金できる金額の上限は100万円。

残高が100万円を超えた場合、自動的に事前に登録した銀行口座に資金が移動されますが、送金手数料が従業員の口座から差し引かれる場合も。口座残高が100万円を超えないよう、事前に銀行口座などに振り替える必要があるでしょう。

給与デジタル払いの仕組み

給与のデジタル払いは、従業員側の同意がある場合などに限り、可能になります。労働者の同意が必要で、強制ではありません。

デジタル給与を実現するためには、事前に準備が必要です。

  1. 決済アプリ事業者などの選定
  2. 中間連携事業者への出力用データ形式の決定
  3. 従業員が利用する決済アプリなどの連携情報の収集と登録
  4. データ出力システムと決済アプリなどの連携

まとめ

  • 給与のデジタル払いは2023年4月1日解禁
  • 従業員側の同意が必要で強制ではない
  • 振込手数料の削減などのメリットがある
  • システム導入コストや担当者の負担が増えるなどのデメリットがある

2023年4月1日より解禁となる給与のデジタル払いは、現段階ではデメリットやリスクが大きいように感じられます。

しかしキャッシュレス後進国である日本が、世界の流れに乗り遅れないためにも、柔軟に変化に対応する必要があるでしょう。

導入を検討している企業はもちろん、今のところ導入しない方向であっても、早めにデジタル給与についての理解を深めておくことをおすすめします。